Twitterを中心に話題になっているチケットノルマ制について、書きます。
演劇業界には、チケットノルマ制を悪用して公演(ひいては役者とお客様)を金儲けのために利用する悪い奴らがいます。
ただ、そんな奴らがたくさんいるからと言って、すべてのチケットノルマの団体が「そんな奴ら」にくくられたらたまったもんじゃねーよ!一緒にすんなよ!
と言いたいので書きます。
チケットノルマをめぐる議論については、Twitter上で様々な意見を見たり、実際にお会いした方とはなしたり体験者の話を聞いたりしました。
その上で自分が思うところをまとめようとしたのですが、私の中には制作視点と役者視点が分かれて存在していて、なかなか一つに筋を通して語るのが難しい、ということがわかりました。同じようなことを言っている方を見かけますが、そもそも絶対的な答えはないのだと思います。
書きたいことを全て書くと支離滅裂になる恐れがあるので、このブログは「主催者と役者の関係性と、意思確認の有無」という部分に重点を置いて書いていこうかなと思います。
この話をする上で最も重要な論点のひとつだと感じたからです。
主催者と役者の関係性について
議論がなされている「悪いチケットノルマ」は、つまりこういう感じだろうと思います。
・主催がお金を儲けるための公演。大目的が、演劇ではなく金儲け。
・舞台に出たい(おもに新人の)役者から多くのお金(ノルマ)をとる。
・人数が多い方が一回の公演でたくさんお金が主催に入るので、ダブルやトリプルキャストにする。チケット代も高い。
・好きに稽古させて(もしくはまともに稽古しないで?)、役者が楽しんでやってまた来てくれる。
最後の一行は必ずしもそうではないかもしれませんが、知人がノルマ制・キャストが沢山のある現場で実際に感じたことだそうです。
要するに、主催にとって役者が本当のお客さんってことです。たくさんキャストが集まって公演を打つだけで儲かる仕組み。
先日高円寺K’sスタジオチャンネルYoutubeでもチケットノルマを話題にされていて。キャストの多さについて日下さんが「レミゼか?」と言っていたのが面白かったです。わかる~、と思いました。
意思確認の有無について
チケットノルマ問題に言及している人の大半が、結局役者が条件に同意しているならば良いも悪いもない。という結論に至っているように見受けられます。
上記のような公演でも、役者が同意して参加している場合はまあ問題ないと思います。(本当は、そんな演劇、滅びろ!!!と思いますが、人が意思を持って決めたことには口出ししたくありません)
けれど実際よく聞く話は、「出演が決定したあとでノルマが20枚だと知った」とか「知らない間にノルマが最初に聞いた倍以上になってた」とか。
そんなことできるの?と思うけど、事実そういうことをする人が沢山いるのでしょう。同意もクソもありません。(滅!!!)
少しだけ話が逸れますが、こういう話を聞くたびに、私は契約書の重要性について考えます。
様々な悪い事案のせいで、契約書と聞くだけで「なんか怖いもの」と感じる人も少なくないだろうと思います。
けれど契約書とは本来「(ここでは主催者と役者が)お互いに約束を守らせる」ための書面です。(プロジェクトアクト東京では、公演ごとに出演者一人一人と契約書を交わしています)
本当は勝手に約束を変えるなんてことが許されるわけがありません。
だからもし、舞台出演の際の契約書に「勝手に約束を変えていい」みたいな記載があったらその舞台には出るべきではないし、
契約書にあることが守られていないならば大問題だし、
逆に契約も何もなしに主催が決めたことを容易に変えられる、というのも危険なことです。
「ノルマを後から知った」などの場合は契約そのものが問題か、ちゃんとした契約がなされていないことが問題なのだろうと思います。
そして、どうしても主催が力を持ちやすいので、役者は従うしかないことが多いのでしょう。
滅!!!!!!!!!!!!!
プロジェクトアクト東京について
ここからは、プロジェクトアクト東京の実情と私の考えです。
条件などの事実に変わりはありませんが、考え方や解釈はメンバーによって多少違うだろうということをご了承ください。
プロジェクトアクト東京では、数枚のチケットノルマ+一定枚数以上全額バックという条件で役者の皆様に出演していただいています。
脚本や稽古の雰囲気、演技の方向性などを確認した上で「参加したい」という同意がある前提のもとです。
主催がやりたい作品のために、なんで役者がノルマを負担しなければならないのか?という意見があると思います。その通りだと思います。
だからこそ、上述の「主催者と役者の関係性と意思確認の有無」で考えたことをふまえて、ノルマという制度で公演をするならば「その公演が役者自身もやりたいこと」であることが絶対だと思っています。
その部分の確認を怠らないために、たとえばいまキャスト募集中の次回公演では、応募者の方に事前に台本をお渡しして「本当にこの本でやりたいか?」を考えていただく→OKの場合は演技審査に参加していただき、演出や演技の方向性などが自分のやりたいものなのか?雰囲気や人は大丈夫そうか?を判断していただく時間をとっています。
役者は主催が儲けるためのお客さんではありません。上下もないのが理想だと私は思います。
お互いに同意をした上でならば、役者と主催は、良い公演をするための役割の違う協力関係だと認識しています。(認識だけで実情が伴っていないと、主催側が「協力関係だ」と主張することは権力的になりかねないですが)
これまで明確に言語化ができていなかったので微妙にしっくりこない部分もあるのですが、
私の中では、公演を成功させるために主催側は制作全般を担い、役者の皆様には演技力と集客力をもって力になっていただく、というイメージです。もちろん主催も集客をします。
プロジェクトアクト東京では、役者の実力によってノルマ枚数の交渉がもちろん可能ですし、たくさんお客様を呼んだ役者はその分たくさん受け取れるように、一定枚数以上は全額バックとしています。
そして制作はもともと主催側の範疇なので、当日スタッフ等を手伝っていただく場合には別に謝礼をお出しします。
チケットノルマというと金銭的負担なイメージに直結しますが、どちらかというと「この人数以上お客様をみんなで集めようねという約束」だなと思いました。(ご参考までに、アクト次回公演のチケットノルマは9枚です)
私たちと作品作りをしたいと思う役者の皆様、力を貸していいただけませんでしょうか、、私たちも役者の皆様のためになるよう尽力します。という気持ちです。
本当はギャラを払いたいです。(正当な対価としてのギャラを払えるのか?はここでは別として)
お金を集めるという意味で、主催としてするべき努力はたくさんあります。クラウドファンディングみたいなやり方もあるし、助成金をいただくこともこの先必要と考えています。
けれども、まだ実績も知名度もあるわけではない。というか、ない!!!
実力をつけるにも知名度を上げるにも、まずはたくさんの人に見てもらうことからスタートするのでは、と考えます。いい作品を目指すことは大前提で、でも、見てもらえないことには意味がないし発展しない!
けれども、実績も知名度もない団体をどれだけの人が進んで見に来てくださる?
つまり集客も自分たちだけでは限界がある!!!(やれる努力はもっとあることを最近痛感しています!それはこれからどんどんやる!)
そしてたくさんの人に見てもらった方がいいのは、公演に出演するからには役者も同じだ、と役者目線の私は思います。
作品や演技が良ければ、より多くの方に見てもらうことで団体や役者を好きになってもらえたり、また見に来てくださる方が増える可能性が広がる。
実際にこれまでの公演でも、キャストがお目当てでいらした方が団体のファンになってくださったり、その場でもう一公演ご予約くださる方がいたり、公演をきっかけにキャストのファンになって個人物販を購入してくださったり、、 本当にありがたいことです。
まず第一に自分たちが「良い」と思う作品をより多くの方と共有するために。そして団体や役者がこの先も活動を続けていくために、集客はとても重要だと思います。
プロジェクトアクト東京は、本当はその集客力を団体が持ちたいのだけど、役者の皆様にお手伝いをお願いしている状況です。いま負担をしていただいている分は、この先力をつけて絶対に恩返しをしないといけないと思っています。
おまけ ダブルキャストの話
ノルマの話と同時にダブルキャストに言及している(というか苦言を呈している)方をちらほら見かけましたが、それについてはけっこうはっきりとした意見があります。
最初の方にキャストが多いことを揶揄する書き方をしましたが、プロジェクトアクト東京も第三回公演『堕天使とボノボ』以降はダブルキャストで公演を行なっています。創作という点において、ダブルキャストで公演を行うメリットは多岐にわたると感じています。
作品という視点で見るならば、ダブルキャストで公演を行うことで、表現したいことそのものに幅をもたせることができると実感しています。
『堕天使とボノボ』ではとくに演出も変えずキャストだけが違ったのですが、それでも自然と出る「その役者だけの魅力」のおかげで全く違った印象になり、面白いなあと思いました。
その次の第四回公演『悪魔の涙』以降は意図的に演出と主題曲を変えて上演を行い、お客様からも良い反応がいただけ、現在そのスタイルが定着しつつあります。
次回公演はダブルキャストに加えダブル演出で、同じ台本でも全く違ったアプローチの作品になるだろうと楽しみです。
さらに、役者視点でも、ダブルキャストいいなあ!と思っています。
自分ともう一人同じ役を演じる役者がいることで、思わぬところで発見があったり、行き詰まったときに、役として近いけれど別の視点で話したりできる。
そして、もう一人の役者の魅力がわかればわかるほど、自分自身の魅力にも向き合うことができるなと感じました。
これは代役を見るのとはわけが違います。全力で作っている相手とだからこそ、どんどん魅力が磨かれあうのだなと思います。
まとまりきらない文章を、ここまで読んでくださってありがとうございました。
私はここで私たちのやり方の正当性を主張したかったわけではなく、むしろ書きながら「もっと良い方法をとっていきたいなあ」という思いをますます募らせたのですが、、、
とにかく言いたいことは、
悪徳ビジネス演劇人の理不尽チケットノルマのせいで、チケットノルマを採る団体がみんな悪いイメージになるのが許せないということ。ましてやダブルキャストまで!
風評被害になりかねないではないか!「そんな団体」にくくるな!
いやそもそも「そんな団体」が多いからこんな議論になってんだろうが!
滅!!!!!!!!!!
おおぜきあい